ジャパンeポートフォリオがとん挫(運営許可停止)とのニュースを読んで

先日、大学受験改革の柱でもあったeポートフォリオの運営許可停止のニュースを耳にしました。どうやら参加大学が思ったより伸びずに財務基盤が不安視されることが理由のようです。

JAPAN-eポートフォリオとは、

  • どんな成績だったか
  • どんな役職をしてきたか
  • 参加したボランティア活動について
  • 検定試験について
  • 海外留学

などなど、どんな学校生活や人生を過ごしてきたのかデータとして残していくものです。そして高大接続(高校と大学と大学入試を一体化した教育として子供たちの能力を伸ばしていく考え)に活用される予定でした。

教育におけるポートフォリオは総合的な学習の評価方法として外国で活用されてきたものです。私はポートフォリオの活用は否定しません。使い方によってはとても良いものだと思っています。ポートフォリオの役割は、小さい時からの成長の様子を確認しながら、自分自身の成長の過程や振り返りとして活用する振り返り日記のようなものだと思っています。けっして他人と比較して使うものではないと思っています。

ポートフォリオを見ることで、先生からアドバイスも受けやすくなります。進みたい将来の道に向かって改善指導が受けやすくなります。ただ、反対に子供の表面的な部分のみ見る教師の場合ポートフォリオでの先入観で児童や生徒を判断してしまうかもしれません。

JAPAN-eポートフォリオは高校生活の様子が大学入試での合否判定に使われると先ほど言いました。どのくらいの割合で利用されるのかは発表していない大学がほとんどでしたが、これは高校受験における「内申書問題」と同じようなことが起きると想像できます。

部活のキャプテンや部長が加点されるのあれば、サポート役でうまく部活が回るように間に入って調整してくれる子が評価されないのはおかしいことです。また、手伝いも必要ない家庭で育って時間もお金も余裕がある子のボランティア活動が加点される場合、家計を助けるためのバイトをする子や家事や介護などの家の手伝いなどを自分の時間を削ってやっている子が不利になるのはおかしい事です。

他にも留学経験が加点されるというのは、すでに経済格差による教育格差、それから地域格差があるところから受験がスタートすることになります。

さらに、高校だけでなく中学や小学校から受け継がれるデータになった場合、子供にとっては消したい過去のような事が引き継がれていく苦痛もあるかもしれません。受験や進学、進級のたびに自分以外の人がそのデーターを閲覧できることを嫌がる子も少なくないと思います。

ポートフォリオをしっかりと活用して、子供の学習や成長に役立たせることは賛成です。子供の自尊心を尊重し、少しずつ成長する子供本人のサポートができる教師に利用されるのも賛成です。

ただ、家庭環境や生活地域による差でどうにもならない行動やリーダーのみを評価するシステムが入試に活用されることには反対です。このような生活全般が評価されるシステムが導入されるとそれこそ画一的な子ばかりになってしまう気がしてしまいます。

学力検査、AO試験、一般推薦、指定校推薦、それぞれ良い面と悪い面があると思います。でもだからこそ色々な子にチャンスがあるのかなって思うんですよね。もちろん、e-ポートフォリオで判断する大学があってもいいと思います。でも、国をあげてそのシステムを利用しないと大半の大学を受験できないという状況になるのは良くないことだと思います。

参加しないわけにはいかないのが国から運営費をもらっている各大学だと思います。でも「利用する」ではなく「参考程度の利用」と表明してくれていたのは、大学の先生方も色々思うところがあったんだと思います。

ここ数日の報道で文部科学省はJAPAN-eポートフォリオの運営許可を中止する見込みのようです。大学入試改革ではすでに英語民間試験の活用と記述式問題の導入が見送られています。そしてもうひとつの目玉だった「主体性の学びの評価」のために活用される予定だったJAPANe-ポートフォリオの導入中止。三本柱がすべてあやふやなままです。

今年の大学受験生は新型コロナに振り回され、大学入試改革に振り回され、大変な年になってしまいました。そしてここから先の数年間も大学受験改革は落ち着かないでしょうね。うちの子も数年後には大学受験です。動向が気になります。

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